Blog 25 7月 2018

増える「物言う株主」と日本企業による海外M&A

Deallogic(ディールロジック)が実施した米国、欧州、日本間のFDI(海外直接投資)調査によれば、2018年上半期における日本企業の海外企業M&A合計金額が、欧州企業のそれを上回ったようです。

2018年上半期、日本企業の海外M&Aに関する投資費用は、過去最高となる1,120億米ドルを記録し、初めて欧州企業を上回りました。これは、欧州・日本におけるM&Aで1,750億米ドルを費やした米国企業の合計金額に次ぐ数値です。

さらに興味深いのは、長期的なトレンドです。2010年以降に日本企業が欧米企業を買収した金額の年間平均は、2000年から2009年までの年間平均金額の3倍以上となっています。

人口減少や国内市場の停滞など日本特有の構造が、海外企業の買収に拍車をかけていることは明らかで、長期的視点からも予測されていたことでしたが、最近では、これに短期的な要因も加わります。それが、アクティビスト(「物言う株主」)の存在です。

世界規模で潤沢な投機資金、過小評価されている日本企業や、コーポレートガバナンス・コードの大幅な改善により、アクティビストが再び日本に注目しています。2017年だけでも、日本に本社を置く28の企業がアクティビストの標的になりました。2016年より20%増えています。ドイツの19件と比較しても圧倒的に多い数値です。

シェアホルダーアクティビズムの台頭に関しては、近日中に別のブログ記事を投稿する予定ですが、単純な予測として言えるのは、シェアホルダーアクティビズムの高まりにより、日本企業による海外M&Aにますます拍車がかかるということです。

まず、アクティビストは企業戦略を精査し、株主価値の向上を強く要求する傾向があります。彼らの提言には、戦略的でない資産の売却や他分野への投資が含まれることが多く、結果として海外での買収につながることが多々あります。

次に、より重要なポイントとして、日本企業がこの傾向をより強く意識するようになり、自らが自社に対してアクティビストのような役割をし始めているということです。

極端な例えかもしれませんが、武田薬品工業が、アイルランドの製薬大手・シャイアーを620億米ドルという巨額で買収することを決めたのは、アクティビストからの圧力を想定していたからかもしれません。

しかし、今後数ヶ月から数年にかけて、日本企業はアクティビストからこの類の圧力を受けることが予想され、海外M&Aがより一層増えるかもしれません。これからの展開に注目しています。