11 29 2019
【寄稿記事】卓見異見/株主アクティビズム活発化

Kekst CNCアジア地域代表/日本最高責任者 ヨッヘン・レゲヴィー(2019年11月25日付け 日刊工業新聞)

■脅威と捉えず成長機会に

【カネ余りで活動に拍車】

近年、日本で株主アクティビズムが活発化している。もともと1980年代に米国で始まったが、日本では99年頃、村上世彰氏らが率いる村上ファンドの活動が注目を浴び「物言う株主」として市場で存在感を高めた。

日本企業を標的とした海外アクティビストの第1波は2006—08年に起きた。ブルドックソース、サッポロホールディングス、アデランス、Jパワーなどが代表例だ。しかし当時は多くのアクティビストが撤退に追い込まれた。14年に始まった第2波は大きく異なる。アクティビストによるキャンペーン数だけ見てもその違いは明らかで18年は米国に次ぎ日本が2位だった。この第2波は日本の企業、ひいては経済全体に大きな影響を及ぼすだろう。

今回は何が違うのか。まずは世界的なカネ余りだ。金融緩和や低金利環境下ではアクティビスト含め投資家はより多くの資本を投入できる。2点目は日本政府のコーポレートガバナンス(企業統治)改革だ。安倍晋三政権によるコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード導入と改訂が追い風になった。3点目は「物言わない株主」時代の終焉(しゅうえん)だ。従来は物を言わなかった国内外の機関投資家が長期的な企業価値向上を要求し、時にはアクティビストの姿勢に賛同を示している。

【企業価値磨き積極発信】

日本には世界最高水準の技術力を含め確かな強みを持っている上場企業が多く、非常に高い国際競争力を秘めている。しかし、これらの企業は世界の競合他社よりかなり過小評価されており、アクティビストの格好のターゲットになる。当社は過去30年間にわたり、米国、欧州、日本において、アクティビストから企業を防衛するため、証券会社や法律事務所と連携して助言をしてきた。その経験から次の提言をしたい。

まず、企業が自社のアクティビストになるべきだ。自らアクティビスト視点を持ち、自社を同業他社と比べ、事業ポートフォリオ、資本配分、ガバナンス体制などを精査し見直す。株主視点で自社の脆弱(ぜいじゃく)性を洗い出し、長期の企業価値創造に資する経営戦略を練り、積極的に発信する必要がある。

次に、企業IR(投資家向け広報)を強化すること。日本企業のIR活動は、海外企業と比較して消極的で、株主や経済メディアなど重要なステークホルダーとの積極的な対話が不足しがちだ。平時からステークホルダーとコミュニケーションを重ね、企業の方向性や経営戦略を十分に説明し、理解を得る必要がある。

最後に、アクティビストの手法を分析し、想定シナリオに基づいた対策を考案するべきだ。例えば、アクティビストによる株式取得が大量保有報告書やメディアへのリークで公になった場合、企業声明を迅速に発表するための準備などがある。具体的な改善を求める株主提案やホワイトペーパーの提出、委任状争奪戦や訴訟問題など、事態がエスカレートした場合を想定した入念な準備も必要だ。

最近はアクティビストも多様化し、短期的な利益のみ追求する悪いイメージのアクティビストもいれば、長期的な視点で企業価値向上を目指し、改善提案をする建設的な「コンストラクティビスト」もいる。どちらも入念な準備とステークホルダーとの平時からの積極的な対話が対応のカギを握る。

【受け入れたオリンパス】

日本企業で初めて、オリンパスが自社の大量保有株主である米アクティビスト・ファンドである「バリューアクト・キャピタル・マネジメント」から取締役を迎え入れた。バリューアクトはオリンパスの大規模な企業変革計画に賛同し、知見も提供している。

アクティビスト対応はその種類・手法にかかわらず、経営陣にとってストレスに満ちた状況だ。だがアクティビストにばかり気を取られてはいけない。アクティビスト対応で最も重要なのは他の株主と、最終的には企業自身だ。アクティビストを脅威と捉えるのではなく、適切に対応すれば国際競争力を確保する成長機会になる。(次回は慶応義塾大学教授/デザイン塾主宰の松岡由幸氏です)

【略歴】96年独ケルン大経済学博士課程修了。ドイツ日本研究所副所長、三菱自動車コミュニケーション本部長を経て、04年からKekst CNCの日本最高責任者とアジア地域代表を兼務。ドイツ出身、54歳。

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